ポエトリー・アーカイブ
大学時代の友人で、新聞の記者をやっているY.S.さんが紙面で「ポエトリー・アーカイブ」を紹介(毎日新聞記事)。簡単に言うと、詩人自身の声で朗読された詩を聞くことができるサイトです。
ギンズバーグや、古いところではなんとテニソン(1892年没)の朗読もおさめられていますが、私がいそいそとこのサイトにアクセスしたのは、ブラウニングの朗読が聞けないだろうかと思って、でした。
ロバート・ブラウニング、1889年没。『クリスマスの幽霊』のなかに、ウェストールが彼の詩、「彼らはいかにしてよきしらせをゲントからエックスにもたらしたか」に言及した部分があって、注をつけるのに苦労したからです。
この詩は、ベルギーのゲントを発った三人の使者が、つぎつぎに馬を乗りつぶしながら、南仏のエックスにたどりつき、よきしらせをもたらす、という内容です。訳注では、「よきしらせ」というのが何のしらせなのかを書きたかったのですが、いくら調べても出てこない。当然、詩そのものもなんども読みましたが、やっぱり書いてない。
困っていたところ、ネット上に、同じ疑問をもって調べた人の文章が出ていました。その人は、いろいろと文献を調べた結果、「ブラウニングが書きたかったのは、馬が駆けるリズムそのもの。史実を伝えようという意図はない」とわかったというのです。つまり「よきしらせ」は、このリズムを出すための方便、なんでもいい、というわけです。そ、そんなあ!
でも、詩って、そういうものかもしれませんね。妙に納得したのでしたが、アーサー・シモンズという人が書いた『ブラウニング詩作品研究への手引き(松浦美智子訳)』によると、「よきしらせ」は暗に「ゲントの講和のそれを意図」しているとのこと。詩が書かれた年代から推測すると、1814年、"第2次英米戦争"を終結させた「ガン(ゲントの別読み)条約」のことみたいです。
へええ、"第2次英米戦争"なんてものがあったんですね。またまた、(こんどは自分の無知に対して)びっくり! ヨーロッパでナポレオンに対する戦争がつづいているあいだに、海上貿易と先住民族追い出しにからんで、アメリカがイギリスに対して起こした戦争だそうです。
そして、この本の著者は書いています。「私が思うに、この最も感動させるバラードを、息もつかせぬ感情を持って読んだことのない少年は、ほとんどいないだろう。」これはとてもよくわかりました。馬の駆けるスピード感、つぎつぎに馬と使者が力尽きてゆく緊迫感、そしてヒロイズム。いつか、この詩の朗読を聞けたら。そのとき、私はそう思ったのでした。
それが、詩人本人の声で聞けるなんて! そう、たしかに聞けました。ところが……またまた、詩人の肩すかしをくうことになったのですが、それを書いてしまうのも無粋な話なので、どうぞご自分で「ポエトリー・アーカイブ」をのぞいてみてくださいませ。ブラウニングの朗読は、右の方にある索引の「B」をクリックすると出てきます。どうやら、インターネット・エクスプローラでないと音が出ないみたいですが。(←これは私の勘ちがいみたいです。FireFoxをご使用の方はコメントのやりとりをご覧ください。)
The Children's Archive も、とてもいいです!
コメント
こんにちは。
だいわというものですが、私もドイツ語学習者です。
もし宜しければ、私のBlogと相互リンクして頂けませんか?
何卒、宜しくお願いいたします。
「daiwa's world Ⅲ」
http://blog.livedoor.jp/daiwa0830/
投稿: だいわ | 2006年2月26日 (日) 13時11分
だいわ さん
相互リンクのお申し出、ありがとうございます。ただ、ご覧のとおり、このブログではリンクを表示していませんので。でも、ブログはこれからも見せていただきますね。ドイツ語の勉強のためにも(笑)。今後とも、どうぞよろしく!
t-mitsuno
投稿: t-mitsuno | 2006年2月26日 (日) 23時37分
mitsunoさん
おもしろい記事と共に、サイトのご紹介ありがとうございます。どうしても聞きたくてせっせとReal Playerをダウンロードしました。FireFoxでも聴けました。
ブラウニングを探し出して、聴いてみると、、なるほどー。肩すかしの意味がわかりました。
でもでも、楽しいですね。詩作した本人が朗読することこそ、言霊を感じることはないでしょう。「よきしらせ」についても勉強になりました。
投稿: さかな | 2006年2月27日 (月) 18時15分
さかなさん
コメントをありがとうございました。いま、RealPlayerをインストールし(直し)てFireFoxでためしてみたら、聴けました! プラグインとしてインストールされてなかったってことなのかしらん??? たいへん失礼しました。
あのサイトで私が一番好きだったのは、Children's ArchiveのValerie Bloom という人の朗読でした。ジャマイカ訛りらしき英語が、とっても味があって。
やっぱり、言霊ってありますよね。
t-mitsuno
投稿: t-mitsuno | 2006年2月27日 (月) 21時17分