2012年1月 1日 (日)

謹賀新年

 災害で明け暮れた年が終わり、新しい年がやってきました。3.11からこっち、長かったです。色んなことがありました。
 年があらたまったからといって、何も変わるわけではないけれど、今年こそ平和な年であってほしい。ほんとうにそう思います。  

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 2012年が、みなさまにとってよい年でありますように! 
                             2012年 辰年 元旦

     

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2011年11月 4日 (金)

『オン・ザ・ライン』 トークイベント


朽木祥作『オン・ザ・ライン 』。スポーツに秀でている一方で、活字中毒ニンゲンでもある――現実にはいても不思議はないのに、なぜか物語世界ではあまり見かけないタイプの少年が、この作品の主人公だ。
 一人称の語りがこの主人公にぴったりで、つねに「見ている」側にいる少年の、うっかりしてしまった恋がせつない! しかもその恋の相手は……。
かはたれ 』や『引き出しの中の家 』でファンタジー作家として確固たる地位を築き、『風の靴 』では中学生の少年を主人公としたリアリズム小説を書いて高く評価された作者が、いよいよYA小説の分野で本格的に始動したというわけだ。
 エンタテインメントとして読んでも楽しい。個人的には、主人公のまわりの体育会少年たちが大好き(笑)。自分がまさにここに描かれているような旧男子校に通ったせいか、読みながら、いたいた、こういうヤツら! と何度思ったことか。バンカラというか、脳天気というか、そういう学校の雰囲気と、その中で語られる繊細な主人公の心のうちのバランスが絶妙なのだ。
 ★この作品を題材に、来週末、作者の朽木祥氏のトークイベントが新宿ジュンク堂で開かれる。自身もスポーツ万能かつ活字中毒ニンゲンと思われる作者から、どんなトークが飛び出してくるか、とても楽しみだ。
 参加を希望される方は、電話(03-5363-1300)で予約を!
◇会場 ジュンク堂書店新宿店 8階カフェ
◇定員 40名
◇入場料 1,000円(1ドリンク付き)
ジュンク堂HP:http://www.junkudo.co.jp/tenpo/evtalk-shinjyuku.html
 

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『ふしぎなふしぎな子どもの物語』


 正確には『ふしぎなふしぎな子どもの物語--なぜ成長を描かなくなったのか?--』というのが書名である。
 児童書やYA向け読み物の出版にかかわっている人間としては、黙って見過ごせない副題だ。なぜなら、児童書のいちばんの特徴が子どもの成長を描いていることだというのは、児童書界の常識だから。常識というのは大げさかもしれないが、少なくとも私はそう思って児童書を読んできた。なのにこの本は、「子どもの物語が成長を描かなくなった」と宣言しているのだ。
 というふうにかなり煽られて手に取った本だったが、読み始めてみると、期待どおり、とても刺激的な物語論、というか文明論だった。
 筆者は、子どものための物語はどうして成長を描かなくなったのか? この社会の中で子どもはほんとうに成長して大人にならなければならないのか? を、実際の作品を紹介しながら考えていく。ふたつ目の問いに対しては明確な答えを提示していないが、性急に結論を押しつける前に、子どものための物語に関して私たちが持っている既成概念をつぎつぎにぶっ壊し、考えるヒントを提供してくれる。
 子どものための物語=児童書という「既成概念」で読み始めた読者は、冒頭のかなりの部分をゲームやTVのヒーロー番組といった児童読み物以外の作品が占めていることにとまどうかもしれないが、読んでいくうちに、この構成になった理由がわかってくると思う。
 そうした既成概念にとらわれていないで、もっと広い見地から子どもの(ための)物語を見てみましょうよというのが、筆者の一貫したスタンスのようにも思える。その意味で、児童書に関わる人たちにこそ読んでほしい本だ。
 同じ作品がちがう視点で読み解かれていたり、より発展させた形で紹介されていたりするので、同じ筆者による『大人のための児童文学講座』と読み比べてみてもおもしろいのではないだろうか。
 ちなみにこの本は光文社新書として出版されたが、カバーにあった紹介を見ると、この新書の既刊書には『子ども最貧国・日本』とか『日本の子どもの自尊感情はなぜ低いのか』といった、非常に興味を惹かれる本が並んでいる。
参考:http://www.kobunsha.com/shelf/search/book?freewords=%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%82&series=400001
 なお、この本は同社から電子書籍版も出た。しなやかな感性で子どもの物語を書き、語る、ひこ・田中氏ならではの展開といってもいいかもしれない。

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2011年5月14日 (土)

二つの公演のおしらせ

 今回は以前にご縁のあった方たちの公演を二つご紹介。
演奏会「アイルランドの風」
 アイルランドと日本で演奏活動を行っている守安功・雅子夫妻が、ホイッスルの名手ショーン・ライアンを迎えて贈るアイルランド音楽の演奏会。
 夫妻が演奏する楽器は――守安功:アイリッシュ・フルート、ホイッスル 守安雅子:アイリッシュ・ハープ、コンサーティーナ(六角形の小型アコーディオン)バゥロン(アイルランドの太鼓)。夫妻はアイルランド音楽のCDも出しており、その一部がこちらで参照できる。
Sean_color_w300  ショーン・ライアンが演奏するホイッスルという楽器は日本ではあまりなじみがないが、彼のCD、Minstrel's Fancy の紹介頁で視聴できる。コンサートのタイトルどおり、アイルランドの風が感じられるような、そして踊りのステップが見えてくるような演奏だ。ぜひ生で聞いてみたい。
日時:6月9日(木) 3PMからと7PMからの2回公演
場所:東京オペラシティ・近江楽堂
     新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティ3階
料金:3000円
予約・問い合わせ:オフィスP&B paddy@mvb.biglobe.ne.jp

テアトル・エコー公演『風と共に来たる』
 こちらは、私にとっては翻訳界の大先輩である酒井洋子さんが脚本を訳し、演出も手がけた作品。
 昨年の初演は大好評で、右肩上がりに観客が増え、すぐに再演が決まったという。初演の反響はこちら、出演者とストーリーはこちらで。
Photo_3  テアトル・エコーは、ご存じの方も多いと思うが、ニール・サイモン、ノエル・カワードなど現代の喜劇を数多く上演してきた劇団。オリジナル作品にも積極的で、井上ひさしが作品を書き下ろしたことでも知られる。上記ニール・サイモンの戯曲はすべて酒井さんの翻訳で、そのうちかなりの作品を彼女が演出している。団員は声優として活躍している人が多く、みなさんとても芸達者だ。
公演日:5月20日(金)~6月1日(水)
場所:恵比寿・エコー劇場
料金:一般は5000円 公演詳細

 震災後、キャンセルになった公演も多かったし、やたら外出する気になれなかった方も多いと思うが、しばしこうした音楽やお芝居でストレスフルな日常を忘れていただければうれしい。  

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2011年3月16日 (水)

いま文学者ができること

 金曜日に東日本大震災が起き、いままでにない恐ろしい揺れを体験してから5日間。
 都内にある我が家は、本棚から本が落ち、たくさんの窓が勝手に開いてしまうといった程度の被害で済んだ。一時連絡が取れなくなった家族も、夜になって無事に帰宅した。
 だが、被災地の惨状には言葉もない。
 原発事故の行方も不安だ。昨夜あたりから、また余震が増えてきた気もする。被災はしていないけれど、停電情報と物不足にふりまわされ、無力感に押しつぶされそう……。
 そこで、電気を使って申し訳ないけれど、思い切ってCDをかけてみたら、魔法のように気持ちが明るくなった。やっぱり音楽の力はすごいと思った。
 こんな時、文学はいったい何ができるのだろうか?
 そう思っていたら、被災地にいる出版関係者、さかなさんが自らのブログ1day1bookで、アメリカの文学者のメッセージを紹介してくれた。『ゲド戦記』の作者アーシュラ・ル=グィンが日本の読者に宛てて書いたもので、ル・グィンの作品の翻訳者でもある谷垣暁美さんが翻訳している。アクセスできる方には、ぜひご自分で読んでみていただきたいので、とりいそぎアップした次第。
 作家の絲山秋子さんも3月14日の日記に書いているが、文学に関係した仕事をしている者は、被災地を思って悲しみ、祈りながら、一方では黙々と自分の仕事を続けていくしかないのかもしれない。ル・グウィンのメッセージを読んでも、同じことを思った。そのことによって直接災害復旧に貢献できるわけではけっしてないし、だからこそみな無力感にさいなまれているのだが。
 

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2011年2月22日 (火)

アラブが気になる

 30年ほど前、アラブ諸国をしきりに訪ねたことがあった。
 いま注目されている某国を訪れた時のこと。
 ちょうど国の祭典が開かれていたのだが、物事がなかなか前へ進まず、「待ち」の時間がいつまでも続いて……。と思っていたら、あるとき突然事態が動いて、そうなるとすべてが爆走、バスも反対車線をどんどん走る。
 興奮した群衆がパレードの列に迫ってくると、警察が空に向かって発砲、群衆はいったんおとなしく引き下がるが、しばらくするとまた押し寄せ、警察もまた発砲、という具合だった。
 何が起こっても不思議はない国、という印象だったが、何も起こらなかった。しかも、何十年もの間。
 だが、その国がいま激しく動いている。そもそものきっかけはインターネットで人々がつながったことだという。
 どこの誰が発言しているのか、すぐにはわからないから、立ち上がれたのかもしれない。だから、いままでとても考えられなかったような変化が起こり始めたということなのか。
 そのころ私が訪れたアラブの国々では、大事なことは必ず顔を合わせて話し合っていた。
 同じころニューヨークで電話連絡によってどんどん事態が動いていくのにも驚いたが、ちょうどこれの逆でとても新鮮だった。日本でも電話で話を済ませる傾向が強くなっていたが、本当に大事なことを話すにはやはり顔を合わせるべきだと反省もしたのだった。
 あの地域でも、人々は直接顔を合わせるよりは、ネットでつながるようになったのだろうか。
 テレビを見ていたら、アメリカ人が口々に「民主主義の国が増えていくのはいいことだ」といっていた。マスコミには「民主化の波が広がる」というタイトルがあふれている。だが、そんな単純なものではない気もする。
 この先、アラブの国々はどこへ行こうとしているのだろう。とても気になる。

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2011年2月 8日 (火)

Twitter文学賞

 拙訳書『勇気の季節 』が投票されたことから、Twitter文学賞というものが創設されたのを知った。
 投票はすでに締め切られ、結果が発表されている。拙訳書が獲得したのはわずか1票。でも、投票してくださった方に感謝したい。そして獲得投票数1票のこの作品がじつは海外部門の14位なのだ。有効投票数が335だというから、まだまだ小さな賞というべきだろうが、これからどんどん大きくなっていくことだろう。
 豊崎さんによると、「海外文学読者のコア層は三千人」という現状らしい。結果発表の座談会でもその話が出ていたが、3千人の約一割が参加したというのはたしかにすごいことだ。
 わずか1票とはいえ、そうした賞の栄えある初回になんらかの関わりを持てたのはうれしい。
 ちなみに海外作品の1位はミランダ・ジュライ作岸本佐知子訳『いちばんここに似合う人』。  投票結果はこちらで見ることができる。

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2011年2月 7日 (月)

ロッド・スチュワート『アンプラグド・アンド・シーティッド』


 ひょんなことからロッド・スチュワートの『Unplugged & Seated 』というライブアルバムがあることを知り、買ってみたら予想以上によかった。ロッド・スチュワートはやはりアンプラグドが似合うし、ロン・ウッドとの競演もうれしいし、なにより選曲がおもしろい。
 ただ、その中の"Highgate Shuffle"という曲を聴いていて、あれっ、この歌詞はどこかで聴いたことがある、と思った。"I was on my way to school/Early one morning";・・・"I was in love with you, baby, before I learned to call your name"。
 そう、このアブナイ恋の始まりを感じさせる歌詞は、ジョー・ウィリアムズがカウント・ベイシー・オーケストラとのアルバムで歌っているのだ。
 でもレコードを出してみると、曲名は"It's A Low Down Dirty Shame"。そこで、この曲名を検索してみると、オリー・シェパードという人が作った曲。ジョー・ウィリアムズの曲は後半がこの歌詞で、前半はエルモア・ジェームズの"Early One Morning"だった。
 なんだかかなりややこしいことになってきたが、早い話がジョー・ウィリアムズはこの二つの曲を一つにして後半の曲名をつけて歌っていたわけで、そういわれればたしかに途中で曲調が変わる部分がある。
 で、ロッド・スチュワートはエルモア・ジェームズの"Early One Morning"の前半を借りて、自分の生地の名ハイゲートを冠したシャッフルを作った。つまり、二人は"Early One Morning"の半分を使って、それぞれ自分なりの曲を作っていたことになる。作者のエルモア・ジェームズはかのジミ・ヘンドリックスも敬愛していたブルースミュージシャンらしいが、それだけカバーごころをくすぐる曲ということだろうか。
 この曲についてはライナーノーツにも「カバー」とは書いてあるだけで、いくら検索しても元曲をはっきり指摘した情報は出てこない。なんだか「新発見」をしたみたいで、うれしくなり、つい書いてしまった。
"Unplugged & Seated"にはこの曲をはじめとして多くのカバー曲が収録されているが、いずれもいかにも
ロッド・スチュワートらしい歌になっているのでぜひ聴いてみていただきたい。トム・ウェイツイが「誰にもカヴァーできない曲を書いたつもりだったんだけどな」と嘆いたという、"トム・トラバーツ・ブルース(ワルチング・マチルダ)"も秀逸だし、ロッド・スチュワートとジェフ・ベックがヒットさせたという"ピープル・ゲット・レディ"もいい。後者はブルースでよく出てくる歌詞の流れだと思ったら、こちらはMusic Pageというサイトになるほどと納得できる説明が出ていた。

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2011年1月 1日 (土)

新しい年の始め

 新しい年の幕が開きました。過ぎていった一年はあっというまだった気もしますし、逆にとても長かったような気も。
 私は4月から大学で教え始め、新しいことをたくさん体験しました。大学の授業と翻訳の仕事、それから老いが目立つ親のこと……いくら時間があっても足りない一年でした。
 このブログもなかなか更新できず、ご心配をおかけしたかと思います。

2011_2                          
                     2010年 元旦

 今年はどんなできごとが待っているのでしょうか。
 皆様にとりまして、すばらしい年となりますように!
 私はたくさん仕事をしたいと思います。        

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2010年3月23日 (火)

『本の雑誌』に『勇気の季節』が

 本のことにくわしい友人が「『本の雑誌Amazonで 4月号を 』に『勇気の季節 』のことが出ているらしい」と教えてくれた。
 ネットで調べてみると、たしかに今月号(4月号)の目次にこのタイトルが。でも、ほんとにパーカーの『勇気の季節 』なのか。ここはもう買いに走るしかない(笑)。
 結論――穂井田直美さんの<ミステリ特等席>のトップに紹介されていた! しかも、特大文字の「少年よ『勇気の季節』を読め!」というサブ・タイトルつきで。ありがたい、でもちょっと気恥ずかしくもある。たしかに原書はヤングアダルト向けに書かれたものだし、作者のロバート・B・パーカーも若い読者に読んでもらいたかったのだろうと思うが、こうして日本で本になってみると、ほんとに楽しめるのは大人の読者かなあ、という気がしていたからだ。もちろん、少年が読んでくれれば、こんなうれしいことはない。
 ご縁があって『本の雑誌BK1で4月号を』を手にしたわけだが、読んでみるとおもしろかった! 
 たとえば、青山南さんが「南の話」という連載記事を書いている。そういえば同じタイトルの青山さんの本があったなと思い、引っぱり出してみたら、この本 に出ているエッセーの多くが『本の雑誌』が初出だった。今月の話題は『グレート・ギャツビー』で、内容はとっても刺激的。ほんとにあんなこと書いちゃっていいんだろうか(笑)? グレート・ギャッツビーや村上春樹に興味がある方は、ぜひ読んでみてください。
 古屋美登里さんも「こんな授業してます」でギャツビーについて書いている。この作品を授業でとりあげることに躊躇いがあった、というのだが、まさに同感。古屋さんも書いておられるように、その影響の大きさを考えるとアメリカ文学を語るうえで避けて通ることのできない作品なのだけれど、時代背景を若い人たちに説明するのはとても難しいのだ。というか、いまの若い人にこの時代の規範に共感を持て、というのは至難の業。
 じつは私も縁あって4月からまた教えることになり、教材としてフィッツジェラルドを使えないかと考えて模索したので、古屋さんのおっしゃることはすごくよくわかった。同時に、じっくりと『キャッツビー』を教えておられる様子がわかり、感嘆した。やっぱり文学をやるんだったら、このくらい腰がすわっていないといけないんだなあ。私も気持ちを引き締めてやらなければ。
 

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